13.意匠の出願
技術的な改良ではないのですが、デザインに工夫をしてみました。評判が良いので製品化を考えていますが、いかかでしょうか。
 
  従来品に比べますと、機能的で見栄えの良いものに仕上がっていると思われます。製品化に先立ち、意匠登録出願をすることをお勧めします。
      意匠登録出願は物品の形状、模様、色彩、これらの結合であって、目で見て美感を生じさせる創作、いわゆるデザインされた物品を保護します。
  意匠登録出願しますと、審査手続を経て設定登録され、意匠権が発生します。意匠権の存続期間は設定登録の日から15年をもって終了します。
  ご質問の商品を製品化しますと、デザイン的に優れていますので、大きな反響を呼ぶかもしれません。そうしますと、必ず模倣品が出てきますので、これを防ぐために意匠権を確立しておきます。意匠権は登録意匠のみならず、その類似範囲まで権利が及びます。別のメーカーが特徴を残しながらデザインを少し変えて模倣品を出してきましても、登録意匠に類似していれば、権利行使ができます。
  意匠登録を受けるには出願から1〜2年程度かかります。しかしデッドコピーであれば不正競争防止法により模倣品を排除できます。つまり、意匠権が成立するまでは、製品化から3年以内を要件とする不正競争防止法で対応し、その間に意匠権が発生しますので、続いて意匠権で対応することができます。
  意匠登録出願を代理する場合にも、代理内容を出願人の方にご理解していたたくため「報酬説明書(意匠)」の提出をお願いしています。報酬説明書(意匠)には意匠出願から意匠権を取得するまでに必要な費用の内容が詳細に記載されており、出願人として負担する費用がどのようなものかが分かります。
  意匠権も独占権であるという点で特許権と変わりなく、強力な権利として活用できます。あるケースでは、新製品を出しますと、必ず競合メーカーが同等品をそっくりそのままではなく、よく見れば区別できる程度に形や配置を変えて出してくるという慣行が長い間続いており、ほとほと困っておりました。そこで、このような悪しき慣習を打破すべく、新製品の発表に先立ち全シリーズ数品目につき、図面代用写真により意匠登録出願をし、その後、新製品を発表しました。すると競合メーカーは新製品の発表から数ヶ月に満たない内に、性能的に同等品を発表して販売を開始しました。実は今回の新製品には隠れた仕掛けがありました。それは新製品の中に、性能上は全く無意味な部品を設け、デッドコピーかどうかの判断にしようとする試みをしていました。競合メーカーの発表製品を入手して調べてみますと、仕掛けておいた無意味な部品と同等品がそのまま設けられています。おそらく競合メーカーは発表された新製品を入手して調べ、そのデッドコピーをそのまま作り、模倣品といわれないようにデザイン的には区別できる程度の変更を施して発売したものと推測されます。慣習とはいえ、悪質な模倣行為です。
  しかし、今回は違います。新製品全てにつき意匠登録出願しています。出願から約1年半後、意匠登録出願は審査手続を経て全て意匠登録となり、意匠権が発生しました。意匠権の成立に伴い、競合メーカーに権利侵害である旨の通告をなし、不必要な係争は回避したいので、実施権を許諾するということで合意し、結果として、新製品が出たらデッドコピーして対向品を出すという悪しき慣習を断つことに成功しました。
   
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