1.特許の出願
新しい治療方法を考えております。治療方法について特許をとることができるのでしょうか。
人間を治療する方法は、医療行為であり、産業上利用することのできる発明に該当しないとしており、このため治療方法は特許を取得することができません。
この治療方法には、(i)患者に投薬、注射、又は物理療法などの手段を施す方法、(ii)人工臓器、義手などの代替器官を取り付ける方法、(iii)虫歯予防などの病気の予防方法(マッサージ方法などを含む)、(iv)注射部位の消毒、機能回復訓練、床ずれ防止などの処置方法が含まれます。
しかし、先生の考えている治療方法に、何か新しい医療機器を必要とするのであれば、医療機器につき特許をとることができ、もし、その医療機器がなければ治療方法が実施できないようであれば、医療機器の特許を取得することで、実質的に治療方法の特許を取得したと同じ結果が得られます。
また医療機器の特許出願の中に、医療機器を使用した新しい治療方法を実施例として詳細に記載しておけば、出願公開された際に、先生の考えた新しい治療方法を世の中に公開し、医療分野の発展に寄与することができるという論文発表的な側面もあります。
では、人体から採取した血液や組織を処理する方法は特許をとることができるでしょうか。血液や組織を採取して処理する方法やこれを分析して各種データを収集する方法は特許をとることができます。しかし、採取した患者に治療のために戻すことを前提にして、採取した者を処理する方法は、特許を取得することはできません。
これに対し動物を対象に治療する方法は、動物は法律的には物にしかすぎませんので、医療行為に該当せず、特許を取得することができます。だたし、人間が対象に含まれないことを明らかにすることが必要です。
米国においては、医療も産業であるから、手術、治療又は診断方法は特許として認められています。米国特許法では「新規且つ有用な方法・・・を発明発見した者は、だれでも・・・特許を取得することができる」と規定されていますので、新規で且つ有用な手術、治療又は診断方法は特許を取得することができることになります。ただし、医師が医療行為として特許を実施しても権利侵害にはなりません。
ヨーロッパ特許法(EPC)は医療行為は特許の対象としていませんので、治療方法は特許をとることができません。ただし、投薬方法についてはスイスクレームと呼ばれる特殊な形態で保護される場合があるようです。
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